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(社)土木学会関西支部 2003
 第2回FCCサロン
土木学会認定
CPDプログラム

「これからの川づくり」

●日 時:平成15年8月1日(金)18:30〜20:10

●会 場:大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)5階セミナー室(1)

●話題提供者:江頭進治先生
     (淀川水系流域委員会委員 立命館大学理工学部土木工学科教授)

●コーディネーター:里深好文 
     (京都大学大学院農学研究科 森林科学専攻 助教授)

  
1. はじめに

 平成9年に河川法が改正され,我が国の「川づくり」はまさに大転換期を迎えようとしています。そこで,淀川水系流域委員会の委員である江頭先生を講師に迎えて,「これからの川づくり」についてお話しいただきました。

2. 河川法の歴史

 明治29年に制定された我が国の近代河川法は,その後,昭和39年と平成9年に改正されています。江戸時代以前は領地の生産力向上を目的として領主が河川の管理をしてきましたが,明治維新以後,近代化が進むにつれ多くの水害が発生したことを受けて,河川法が制定されました。したがって,当初の河川管理の目的は「治水」でありました。
 昭和39年には高度成長に伴う水需要の増大を背景として,水系一貫の管理のもとで治水とともに水資源開発を行えるよう河川法の改正が行われました。すなわち,「治水」と「利水」が河川管理の目的になりました。
 その後,社会が発展するに連れ,河川環境(水質や生態系)の悪化が大きな社会問題となり,河川管理の上でも環境の保全が重要な課題となりました。そこで,平成9年に河川法の改正が行われ,「治水」と「利水」に加えて「環境」が河川管理の新たなキーワードとなったのです。また,地域の意見が反映されるような河川整備の計画制度が導入されました。

■3. 新しい河川整備の計画制度

 平成9年以前は工事実施基本計画に基づいて河川工事がなされていましたが,河川法改正に伴い,基本方針と整備計画とに分離され,整備計画案の決定以前に専門家や地域住民の意見を聞くことになりました。基本方針とは,どの程度の降雨に対して流域の安全性を確保できるようにするかを決めたもので,この方針に基づき20年〜30年後の河川整備の目標と具体的な整備内容とを明示するのが河川整備計画です。この計画を策定するに当たり,学識経験者や住民の意見を反映させるために流域委員会が設けられることになりました。淀川流域では様々な分野から選出された51名の委員による淀川水系流域委員会が平成13年2月に設置され,高い頻度で委員会が開催されています。また,通常,行政サイドから提示された河川整備計画の原案に対して流域委員会が意見を述べ,この意見を反映させた形で河川整備計画案が作成されることになっているのに対し,淀川流域では原案の作成以前に「河川整備計画のあり方に関する提言」が流域委員会によって取りまとめられています。

■4. 淀川流域委員会からの提言の内容

 4.1 河川整備の現状と課題
 これまでの河川整備は社会・経済活動に大きく貢献してきましたが,その反面,生物の生息環境や水質は著しく悪化しました。近年の気候条件の変化に伴い,渇水は頻発化する傾向にあり,また,集中豪雨(局所的な激しい降雨)が発生しやすくなっているともいわれています。このような状況の変化を踏まえた河川管理が必要です。

 4.2 新たな河川整備の理念
 河川法改正の究極の目標は河川生態系の保全と回復です。健全な生態系なくして人類の未来はなく,「これ以上生物種を減少させない」「生態系の機能をこれ以上低下させない」との固い決意のもとで,「自然は自然にしか創れない」「川が川を創る」という自然の摂理を原理・原則として,生態系の保全と回復を優先的に検討して河川整備を行います。
治水においては超過洪水・自然環境を考慮し,壊滅的な被害を避けながら,自然環境への影響を極力回避するような河川整備を行います。
利水面では,従来のような水需要予測の拡大に応じて水資源開発を行うという水供給管理を改め,水需要が一定の枠内でバランスされるように水需要を管理・抑制する水需要管理へと転換します。

 4.3 新たな河川計画のあり方
 計画策定のプロセスにおいては,最終案だけでなく複数の代替案についての評価結果を示します。このとき,事業をしないことも含めた代替案を考え,費用対効果分析の評価をします。また,費用(コスト)の中には環境資源や生態系資源の価値も含めます。
 河川環境計画策定に際しては,川や湖の自然のダイナミズムを許容し,局所的な「多自然型川づくり」から脱却して川のシステム全体の回復を図ります。
治水計画においては,超過洪水を考慮し,スーパー堤防やハイブリッド堤防を設けるとともに,ハザードマップや避難システムといったソフト対策も活用します。また,自然環境を考慮して,低水路の蛇行により瀬や淵を復元させるとともに,ダムからの排砂やダムの運用方法の見直しにより,流れと流砂の連続性を確保します。
 ダムは河川の生態系と生物多様性に重大な悪影響を及ぼしているので,計画・工事中を含め,原則としてダムは建設しません。ただし,すべての代替案を検討し,ダム以外に方法がないと客観的に認められ,かつ,住民の社会的合意が得られた場合にはダムを建設することになります。

 


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