FCC 土木と社会とのコミュニケーションプロジェクト


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(社)土木学会関西支部 2003
 第3回FCCサロン
土木学会認定
CPDプログラム

どうしてできない! LRT

●日 時:平成15年10月10日(金)18:30〜20:00

●パネリスト1:路面電車と都市の未来を考える会/RACDA 会長 岡 将男

●パネリスト2:都市交通研究家 服部 重敬

●コーディネーター:兵庫県 県土整備部 県土企画局 交通政策課 主査 本田 豊 

●会 場:大阪府立女性総合センター

  
 今やLRT は,人と環境にやさしくユニバーサルデザインの公共交通として再評価され,欧米を中心に「都市再生の切り札」として次々に導入されています。LRT 導入の結果,モータリゼーションで疲弊したまちには活気がよみがえり,世界中で人々の生活の質が大幅に向上したことが報告されています。一方で,日本でも5 年ほど前からLRTの導入を柱としたまちづくりが全国各地で叫ばれるようになりましたが,残念ながらその必要性こそ議論されるものの,依然クルマ中心のまちづくりからの転換が進まず,本格的なLRT の事業化に繋がった都市はありません。そこで第3 回FCC サロンでは,LRT 導入をめざして全国で活躍されている岡将男氏と服部重敬氏をお迎えして,どうして日本でLRT ができないのか,どうすればLRT ができるのかについて話題提供し,参加者の皆さまとともに考えてみました。

1. プログラム

第3 回FCC サロンは,下記プログラムで進められました。
(1 )欧米を中心としたLRT の現状
(2 )岡山を中心にしたLRT 導入に向けた国内の取り組み
(3 )どうしてLRT が導入できないのか
(4 )国内でLRT 導入の可能性はあるのか


(1 )欧米を中心としたLRT の現状:服部重敬氏

 まず国内のLRT 専門家の第一人者である服部さんより,欧米を中心としたLRT の現
状について講義いただきました。

1 )LRT (Light Rail Transit )とは
@鉄道より小型のシステム(車体幅2.65m 以下)
A導入空間を選ばない(地上,地下,高架)
B地上設備が簡略化できる
→ゆえに「LIGHT 」

2 )LRT の特徴
@利用者本位の交通システム
A低コストで整備・運営が可能
B既存の都市内への導入が容易
C都市計画と連動
Dシームレス(乗換,運賃抵抗がない)
→異なる交通機関の連携による都市の基幹交通システム

3 )都市空間再配分の事例
 欧米で行われているクルマ中心から人中心への都市空間再配分の事例として,オランダ・アムステルダムの定点観測の事例を紹介していただきました。(右側の写真中のクルマはパトカーです。)


4 )海外でLRT による都市活性化を可能にした背景
@関係者の熱意・トップのリーダーシップ
A財政的な裏付け
B低運賃政策で自動車から誘導
C異なる交通機関の連携
D目的実現のための制度の整備
E公益性への判断
F土地利用計画と交通計画の連携
G官民パートナーシップ

5 )近年におけるLRT の動向
@カースルーエモデルの躍進
Aシステムカーへの集約
B都市内路面電車の再登場
C車両の長大化

(2 )岡山市におけるLRT 導入に向けた取り組み:岡将男氏

 岡山市の路面電車を生かしたまちづくりの視点から市民活動を展開し,今や全国を股にかけて市民の立場からLRT 導入を目指してご活躍の岡さんからは,RACDA の活動と,岡山市におけるLRT 導入に向けた取り組みについて講義いただきました。

1 )RACDA の特徴
@まちづくり市民グループと商工会議所により設立された
A政治力があり,国レベルのロビー活動を展開している‥‥‥「第二行政体」を目指しているが,県・市とは意外に対立的な関係にある
B会員は男女半数で,飲兵衛も学者も議員も共存しており,クラブ活動の乗りで活動
C隔週20 名による幹部会を開催し,会員は全国の200 名から構成
D市民活動の全国ネットワーク形成に熱心‥‥‥提案型市民運動としての政治意識を持って活動している

2 )RACDA の活動
@市民へのアピール‥‥‥毎月の話題づくりとして,イベントやシンポジウムの開催,バスマップの作成,超低床LRV 「MOMO 」のデザイン,MOMO 導入のための募金活動,10 万人の署名集め等に携わる
A行政(国土交通省,岡山県,岡山市)へのアプローチ
B全国ネットワークの形成‥‥‥「第3 回路面電車サミット」の開催に始まり,インターネットの活用,LRT ビデオ発売,「路面電車とまちづくり」(学芸出版社)出版
C国へのロビー活動‥‥‥国土交通省道路局及び鉄道局と常にコンタクトをとり,国会「LRT 研究会」を応援

3 )MOMO 導入の意義
@MOMO導入をきっかけに国土交通省で車両購入補助制度ができた
AMOMO導入と同時に電停改良制度ができた(道路構造令が改正された)
B市民からの募金によるLRV
Cまちづくりのツールとしてのデザイン‥‥これまでの「運ぶ箱」から「街のシンボル」へ
DJR 線への乗り入れ前提で設計されている

4 )LRT を取り巻く岡山市の現状
@JRが8方面に延びており,路面電車とJRとの軌道幅が同じ,バスルートの再編も必要
A南北方向の郊外延伸が必要
B岡山駅から岡大医学部附属病院までの1.6km 延伸について具体化すべく,交通社会実験を実施
D市長,市議会がまだ延伸を決定できずにいる
E市民合意とはいったい何か‥‥‥本当の反対は実はこれから出てくる,市民の利益が見えない,環境やバリアフリー,中心市街地活性化の数値化が必要
FJR 西日本が吉備線のLRT 化を表明,将来の相互乗り入れに向けた協議開始
GJR 岡山駅前広場への乗り入れを検討中

(3 )どうしてLRT が導入できないのか

1 )日本における路面電車の現況と課題(服部重敬氏)
○国内では路面電車を残すのが精一杯という地域が多い中で,市民グループが存続運動を展開している。
○多くのシンポジウムで欧州の公共交通優先化の事例を見せても,多くの住民の反応は「あれは欧州のことで自分たちには関係ないという意識しか持っていない。現在のクルマ社会に何の疑いも持っていないため,どれだけ効果的なPR をしても,なかなか裾野が広がっていかない状況。
○自分たちの生活に直接つながる都市問題なのに,日本人の公共交通に対する関心の低さが非常に大きな課題になっている。

2 )岡山市におけるLRT 化に対する課題(岡将男氏)
○岡山市の姉妹都市の米・サンノゼ市が60 編成のLRV を一気に導入したのに対し,岡山市ではやっとのことでMOMO が1 編成だけ。岡山市ではMOMO を1 編成購入す
るのに市民募金までしなければならない。
○事業者である岡山電気軌道の経営状況から考えると,MOMO はせいぜい3 年に1 編成がやっとである。したがって,20 編成をMOMO に入れ替えるのに60 年かかる計算になる。いくら市民募金で導入されるのが画期的だといっても,こんなバカな話はない。公共交通に対する環境が欧米と日本とではまるで違うことが大きな障壁。
○行政関係では,「トランジットモールなどの社会実験やPR イベントに警察の理解がなかなか得られない」「市議会に警察関係者が出席していない」「市長がLRT 導入を公
約に掲げても実行されない」「行政職員がそもそも公共交通に関して理解がない」「市の職員は交通事業者に対して弱腰で動いてくれない」などの課題が山積している。
○そのほか,「市民にLRT 導入のメリットが見えない」「市議会議員の多くが市の郊外に住んでいるため,中心市街地におけるLRT 導入に理解が得られない」「不思議なことに,環境団体やバリアフリー関係団体がほとんど動いてくれない」「公共交通の良さ
を数値化できない」「地元のマスコミの取り上げ方が世論に大きな影響を与えるため,マスコミに対する配慮が必要」「LRT をPR するための交通社会実験をやることによ
り,初めて本当の反対者(タクシー,バスの事業者)が出てきた」など,合意形成に関する課題が山積している。

3 )欧州の視点から見た日本の課題(仏・セマリー社CEO フィリップ・ヴュアイヤ氏)
@制度面の裏付け(交通基本法)がある指導理念に基づく総合的な交通改革
A公営・民営を含めた公共交通の経営の一元化による費用対効果の改善
BLRT の運営に対する補助制度の新設(採算性をとることは難しい)
CLRT 導入までの意思形成プロセスの透明性確保
DLRT 導入ノウハウ・技術を持つ海外の会社に対する閉鎖性の除去

(4 )国内でLRT 導入の可能性はあるのか:本田豊
 時間的な制約から,最後にコーディネータの本田より,国と地方との役割分担を中心に,LRT 導入の可能性に対する提案を行いました。

1 )国に求めるべきこと
 国は,地方に対して交通政策をはっきり示すことが不可欠である。欧米でLRT の導入が盛んになったのは,その国が交通政策をはっきり示してきたからであり,公共交通に対する明確なビジョンを示すことが絶対に必要である。
○具体的には「制度の確立」(交通基本法の制定)
○都市計画・交通計画・道路計画の一体的位置づけ
○道路特定財源を一般財源化するのではなく,交通体系の転換つまり自動車から公共交通への転換を図るために使うべき(交通がいかに都市構造に影響を与えるか)

2 )地方から動き出すこと
 一方で,地方は,自治体と住民との協働により合意形成に努力することが不可欠である。その中には,行政と住民との合意形成だけではなく,行政内部の合意形成,住民同士の合意形成も含まれる。そのときに大切なのは,具体的に公共交通とは何なのか,LRT の必要性について,一般市民に対するわかりやすいPR をする努力が重要(例:市民にイメージしてもらえるLRT に代わることば:LRT のイメージとして例えば「コミュニティ・トレイン」など)。

3 )LRT を導入するための合意形成
○合意形成のキーワードは「TDM 」。単に路面電車を導入するのではなく,自動車交通の抑制が必須となっている。
○特区制度を拡充した「公共交通特区」の導入実現を提案したい。特区では,下記の規制緩和を図るべき。

◆公共交通や歩行者,自転車に優先権を与える
◆自動車の乗り入れを規制すること
◆トランジットモールの導入をスムーズに進めるために必要となる道路法ならびに道路交通法の規制緩和措置も実現すべき
◆事業者に対する税の優遇措置を導入する
◆道路特定財源(ガソリン税)の充当,国から地方への大幅な税源委譲の適用

■2 .会場からの意見
 会場の参加者からは,次のような意見,感想等がありました。

○交通事業者や自動車会社は,もっと意識を変える必要があるのではないか。事業者は,競争することばかり考えているが,もっと協調していく必要があるし,自動車会社は,ここまでクルマ社会になってしまった弊害について考える必要があるだろう。

○時間的な制約から仕方がなかったが,問題のありかがわかっているのだから,もう少し突っ込んだ議論をしてほしかった。


3 おわりに
 今回のサロンは90 分という時間制約の中,テーマの「どうしてできない!LRT 」については,多少なりとも議論できたものの,では「どうすればLRT の導入ができるのか」について議論するところまではいきませんでした。
サロンの後,場所を移して懇親会も盛大に行われ,約50 名の参加があり,この中でも参加者から,ぜひ今回の続きを企画してほしいという意見が相次ぎました。
これを受け,年明けの1 月23 日に,もう一度「どうしてできない!LRT 」パートを開催することになりました。現在,企画立案作業を行っているところです。

 


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